uneyama記録

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どのように伝えるのか(意味のある活用を目指して)id doramaoが記します

 第3回「栄養成分表示検討会」の資料の中で、畝山さんがオススメしていた蒲生委員の資料を読んでみました。内容の一部について個人的に思ったことを少し述べます。次に蒲生委員も必要性を説いている、栄養成分表示についての教育もとても重要な要素だと思います。教育については第3回の議事録がでてから改めて意見を述べてみたいと思います。


■流行と表示義務
 蒲生委員の指摘は視野が広くとても参考となりました。フードファディズムという観点の導入は、望ましい栄養成分表示のあり方を考えるに際し、大変重要なものであると私も考えます。
 例えば、ある栄養成分(栄養素)を積極的に摂取する事が流行った(若しくは危険である)として、その流れから当該成分についての表示を求める声が高くなったとします。では、その意見は参考にされてしかるべきなのでしょうか。大切な事は流行の有無だけでなく、その根拠であるわけです。当該成分が常軌を逸した食べ方をしない限り体に影響を与えないようなものであれば、表示をする事による実質上の利点は見つけられません。
 一時の流行に流されて表示の義務化が行われたとしても、一度義務化されてしまえば、それを取り下げる為のハードルは高くなると思います。また表示が義務化されているという事だけで、国のお墨付きがあると受け取られるなど実際以上に評価(正でも負でも)されてしまう事でしょう。
 なので、流行や注目などの多寡ではなく、公衆栄養の向上にどれだけの影響があるかというような現時点での根拠に因ってその選定はされる必要があると感じます。


■栄養成分表示を必要とするヒト
 蒲生委員は栄養成分表示の対象者について、以下の資料中で次の様に述べております。
【資料3】「消費者の適切な食行動を助けるために〜栄養成分表示の活用と消費者の食行動〜」(蒲生委員資料)
http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin511.pdf

pdf27頁目 2.5栄養成分表示は誰がどのように活用すべきか
 栄養成分表示は広く国民一般が利用するものだが、誰を対象にしたものか考えると、食事摂取基準の対象がそうであるように、「食事療法や食事制限を必要としない健康な人」となるだろう。

 資料で述べられている蒲生委員の意見には概ね賛成なのですが、この部分については私は違う意見を持っております。
 食事摂取基準は確率論的な考え方で求められたモノであり、個人に当てはめた場合に適切とは必ずしもいえないものです。それに対して、栄養成分表示に示された栄養量は誤差があるものの、当該食品を食べる事で概ね表示されている量の栄養素を摂取できる事が期待されます。
 その違いから、食事摂取基準は特別な状況にある人に対する直接的な栄養指針にはなり得ませんが、栄養成分表示は栄養摂取に特別な配慮が必要な人の参考になるものだとわかると思います。
 むしろ、食事を考える上で、何らかの栄養素について摂取量の配慮が必要な人ほど栄養成分表示が大事になると私は考えます。
最近、糖尿病の食事療法で総エネルギーだけでなく糖質量に着目するカーボカウントが広く用いられるようになりつつあります。ところが、現在利用されている食品交換表には参考になる糖質量が示されておりません。患者さんは食品成分表などを参考にします。カーボカウントを実践する人にとっては、わかりやすい栄養成分表示はたいへん参考になる事でしょう。
 同じく、腎臓病ではたんぱく質量やカリウム量が参考になります。普段の食生活が予後に大きく影響を与える病気については、患者自身のコントロールの有無が大変重要になります。医療資源は有限であることを考えても、患者自身が適切な食事療法を実行できる事が大切になってくるでしょう。これらの必要性の高い情報は医師や管理栄養士などから示された食事を実現できるように、なるべく分かり易い形で整備されて欲しいものと私は考えます。


→ここからuneyama
栄養成分表示は誰のためのものかということは前回少し話題になりました。糖尿病の食事指導にとって役に立つようなものがいいという意見に対して座長が病者対策は別途というようなことを話しておられたように思います。また消費者団体の方から、妊婦にとって大切な葉酸の表示を、という要望もでました。一方でそもそも栄養成分表示を気にしているような人はもともと気を遣っている人たちで、ほんとうに見てほしい、食生活に無頓着な人たちにとってはとにかく簡単でわかりやすく単純でないといけないだろう、ということもあります。
どちらももっともなので、両方満たすとすると包装表面にわかりやすいシンボルのFOPプラス背面に個別栄養素表示みたいな形になるのでしょうか?そうするとさらに業者のハードルがあがり検討するべきことが増え・・・という話になってしまいますが。
さらに佐々木先生から、そもそも加工食品にだけ表示があっても食生活全体の一部でしかないという指摘もありました。葉酸などは特にそうでしょう。主要摂取源が葉物野菜なのに加工食品にだけ表示があってもあまり役に立たないでしょう。
表示にできること、できないこと、誰がどう使うのか、という問題はもっと考える必要があると思っています。