uneyama記録

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【ナトリウムの栄養成分表示への意見をid:doramaoが記します】

私個人の意見ですが、栄養成分表示の中で消費者が表示を見て食品選択を行う場合に有用性が高いだろうと考える栄養成分は次の通りです。

『エネルギー』・『炭水化物』・『ナトリウム』

【炭水化物について】
平成19年国民健康栄養調査によれば、糖尿病が強く疑われる人、糖尿病の可能性が否定できない人をあわせると約2210万人となっております。糖尿病は日常の食事との関連性が高い病気であり、中でも炭水化物(糖質)摂取量が血糖値の変動に大きく影響することが知られております。最近では、糖尿病を持つ人に対する食事療法や食事の留意点はエネルギー制限から糖質摂取量に着目した方法に変わりつつあります。
このような状況を考えますと、糖尿病を持つ方が糖質量に着目した食品選択を行う機会は今後高くなると予想されます。炭水化物に関する表示はより重要になると考えます。

【ナトリウムについて】
日本人は塩分摂取量が多いと一般に知られており、その摂取量を減らしましょうと健康施策でも目標を掲げて行ってきたところです。日本人の食事摂取基準2010では成人の推定平均必要量を600mg/日(食塩換算1.5g)と設定しておりますが、日本人の食生活の現実を考慮し、今後5年以内に達成したい目標量として食塩換算で成人男性9.0g未満、成人女性7.5g未満を設定しているのが現状です。これはWHO/国際高血圧学会ガイドラインの高血圧の予防と治療の為の指針が奨める食塩摂取量6g/日未満に遠く及ばないのが現実です。これは、穀物の主食を持つという食事の構成が影響していると考えられます。
このような状況ですので、個々人が食塩摂取量に着目し、適切な食品選択が行えるようにするためにも誰の目にもわかりやすいナトリウム量表示が必要であると考えます。


■ナトリウムの表示
ナトリウムの表示についてはご存知の通り、栄養成分を表示する場合には必ず表示しなければならない項目になっております。
検討会の資料2栄養成分表示をめぐる事情*1p2には、栄養成分表示の例が次のように示されています。ナトリウムに着目してください。

ナトリウムのみの表記と()をして食塩相当量を併記している商品の二通りがある事がわかります。私個人としては、この表記についてある一定量の食塩量を超えるものについては、ナトリウム表記だけでなく、食塩相当量も併記を必須にした方が良いと考えます。

■ナトリウムについての理解
私は地域高齢者への栄養相談や講習会などを通じて彼らの知識水準をある程度把握しております。その理解の程度はヒトそれぞれですが、中にはナトリウムという成分がどのようなモノなのかを知らない方もおります。そのような方であっても、食塩の事は理解できており、血圧と関連しているという事もよく知っております。このような方々に食品表示を利用してもらう為にも食塩相当量で表記を行った方が有用ではないでしょうか。
こうした意見もあるかも知れません。ナトリウムがどのようなものか理解できていない層については、高血圧よりも優先される低栄養予防の観点から塩分摂取量いまさらどうこうしなくてもよいのでは?という意見です。なので、もう少し若い層についても考えてみます。
私の身の回りの方(30〜60代の方15人程度)に聞いてみた信頼性の劣る話ですが、ナトリウム量から食塩相当量に換算できますか?と質問をしたところ、できると答えた人は、10人以上聞いたところ一人もおりませんでした。そうした方でも、食塩摂取量はどれぐらいに抑えた方が良いか知っていますか?という質問には1日10g未満(昔の話ですが)と答えていただけました。この年齢層の方々がある程度の意識を持って減塩に取り組もうと考えた場合、ナトリウムのみの表示であれば、食品選択が上手に行えるでしょうか。少し心配になります。

■教育か表示か
現在の知識レベルを考えるとナトリウムのみの表示では有効活用されないのでは?というのが私の意見です。では、どうしたら良いのでしょうか。一つは教育があげられると思います。ナトリウムがどのようなものなのか、食塩量に換算する場合にはナトリウム量に2.54を乗じたものを1000で除すと周知するとします。しかし、この方法では減塩教育を届けたい相手に十分に伝わらない・理解して貰えない可能性が高いように思います。勿論、教育はとても大切なのですが、食品表示をわかりやすくする方が効果的だと思います。

■ひとつの例
一人当たりの1日塩分摂取量は東北地方が高く、中でも青森県は平均余命が最短であり塩分摂取量の多い地域である事はよく知られております。そのような状況にある青森県ですが、カップ麺の消費量が全国トップレベルであるというデータが存在します。総務省家計調査によれば、2007〜2009年の青森市1世帯あたりのカップめんの購入金額、購入数量は都道府県庁所在地中では最上位に位置しておりました。参考→http://www.stat.go.jp/data/kakei/family/4-2.htm#_3
カップ麺にも色々ありますが、例えば日本で一番販売数量の多い製品のナトリウム含量は2000mgであり、食塩相当量では5.1gです。この商品のエネルギーは357kcalですので、平均的日本人の1食分に十分なエネルギー量では無いのにもかかわらず、食塩摂取量の目標値の半分以上摂取する事になってしまいます。このようにカップ麺は一食で目標量の半分以上の食塩量になりかねない塩分摂取を気にする方には要注意な食品です。紹介した商品については、ナトリウム量だけでなく、食塩相当量も併記されておりますが、メーカーや商品によっては併記されていない商品も存在します。
日本人の食塩摂取量や食生活の現状を勘案しますと、食塩相当量の併記だけでなく、この商品を全て食べると1日の目標摂取量の○%食塩を摂ることになります、という表示が必要かも知れません。
カップ麺を食べるときには表示もみましょうね?というようなキャッチフレーズを認識して貰えれば、頻度を減らすとか、汁を飲むのを躊躇するなどの行動変容につながる可能性も考えられそうです。


■食塩摂取の現状
食品表示の話からは離れてしまいますが、食塩摂取の現状にも言及しておこうと思います。まず、食塩摂取量の推移を確認します。


平成21年国民健康栄養調査結果の概要より

食塩摂取量は年々低下しておりますが、食事摂取基準の目標には及んでいないことが分かります。
グラフを見れば順調に低下を続けているようにも見えます。ところが、ある要素を勘案するとこのグラフ程には順調に減塩が進んでいないのではない可能性が見えてきます。

この表は摂取エネルギー1000kcalあたりの食塩摂取量の変化を示したものです。エネルギー当たりの食塩摂取量の低下は単純な食塩摂取量の低下ほどには進んでいないことがわかります。これは食塩摂取量自体も減ってるのと同時にエネルギー摂取量も同時に減っているからです。要するに食べる量が減れば食塩摂取も減るのは当たり前だということです。つまり、今後食べる量が減らなくなれば、食塩摂取量の低下速度も減速する可能性を示しております。
もう一つ表から読み取れることは、若い年齢層ほど食塩摂取量が少ないという事です。これは食習慣や嗜好の違いからあらわれるものと思いますが、若い人の食習慣の特徴として炭水化物エネルギー比が少ないという事があります。これは『日本型食生活』および『ごはん食』離れと関係しているかもしれません。ごはんに合うおかずにはしょっぱいモノが多いというのは実感に合致すると思います。
勿論、この事だけが影響しているとは思いませんが、本当に塩分摂取量の減量を目指すのであれば考えなくてはならない問題であるというのが私の意見です。