uneyama記録

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栄養成分表示についての個人的な意見や印象など id:doramao記す

■自己紹介など
畝山さんからは栄養学的観点からの意見を期待されていると思いますが、自分のわかる範囲で書かせていただこうと思います。私は管理栄養士という資格で仕事をしておりますが、栄養管理業務の他に、地域の高齢者に対する食事相談や講習会などを行う事もあり、一般消費者がどの程度の認識を持っているか、その生の声を一応は聞ける立場にあります。専門性としては、食品の微量成分の健康効果なども研究していた事もありますが、○○が△△に効くというような主張には懐疑的立場であり、1ヵ月スパンで帳尻を合わせることができれば、ちょっとした逸脱などは全く問題ない場合が殆どであろうと個人的には考えております。なので、消費者がトータルで見た場合得すると期待される制度を設計する事が大切であると考えます。

栄養成分表示について私に求められるのは健康増進法に関わる箇所であると判断し、その部分に重点を置き今後は考えて行きたいと思います。


■畝山さん1/4エントリに感じたこと
検討会の雰囲気が分かりませんので、畝山さんが書いた内容とpdfファイル:栄養成分表示をめぐる事情*1を参考に思い浮かんだ事などを今回は書かせていただこうと思います。

  • その1:消費者は本当に細かい表示が必要なのか?求めているのか?


資料のp16には消費者の意識調査として、モニターを対象にしたアンケート調査の結果が載っております。問いの本文(強調はdoramaoによる)とグラフを転載しまいたが、ちょっと気になる点がありました。
アンケート調査から消費者のニーズを探ることはとても大切な事だと思いますが、ちょっとした言葉の用い方でその結果は大きく変化してしまう事はよく知られていると思います。下線で強調した部分を見ていただきたいのですが、この部分は回答者を誘導していると捉えられ兼ねない、ワーディングでは無いか?と私は思うのです。この結果を見る限りでは殆どの消費者が栄養成分表示の義務化を歓迎しているように見えますが、実際にはそこまで望んでいるのでしょうか。外国で当たり前なのに、日本は行っていません、必要だと思いますか?と、問われれば特に考えたことがなかったヒトでも賛成の回答に傾きかねないのでは、と考えるのです。
では、この文の下線部分を次のように書き換えたらどのような回答結果が得られるでしょうか?

全ての食品に栄養成分表示を義務化を行った場合製造コストが高くなり、中小食品業者の経営を圧迫する虞と、小売価格への転嫁が予想されるところです

結果はわかりませんが、否定的な意見が多くなるような気が致します。

同資料p17から転載します


二つめの表だけを見ると栄養成分表示を参考にしているヒトは見たことがある者のウチ65.6%いるとなっておりますが、見たことのあるヒトの割合は半数にも満たない42%であり、全体で考えると、参考にしている者の割合は約27.5%に過ぎない事が分かります。
以上の事を考えると、関心の程度はそれほどでもないのでは?と考えてしまいます。関心のあるヒトは任意に栄養成分を表示している業者、店舗を選ぶようになるので消費者の選択に任せてしまって良いのでは?という気もします。市販食品の約8割に表示がある現状を考えれば殊更完全に義務化する必要はあるのかな、という事ですね。

同資料p20にはコーデックス委員会ガイドラインの目的が書かれております。その中に次のような記述があります。

栄養表示が、いかなる方法態様によってであり、虚偽である、誤解を招く、消費者を欺く又は無意味であるような形で製品を説明したり、製品に関連する情報を提供したりしないようにすること。

私はこの中にある、『誤解を招く』という部分について色々と気になるところがあります。複雑な制度では消費者が正しい認識を持つことが難しくなり、業者はそれを逆手にとるような商売をする虞があるからです。栄養機能食品の一部(だと思いたい)にはそのように受け取られてもしょうがないような食品表示が見られます。それについては拙ブログで言及*2したことがあります。

  • その3:日本人の食事で過剰や不足が心配されるモノ

畝山さんが言及されておりますが、日本人の全体傾向は抑えておきたいところだと思います。この場合は食品と謂うよりも、食品成分としてまとめた方が良いと思います。
平均的日本人でも過剰摂取による健康への影響が心配される食品成分:水銀、ナトリウム、ヒ素ヨウ素など
食嗜好によっては過剰の虞がある食品成分:脂質、糖質、リンなど
平均的日本人でも不足が心配される食品成分:カルシウム、鉄、食物繊維、(カリウム
食嗜好、生活習慣によっては不足が心配される食品成分:たんぱく質亜鉛マグネシウム、ビタミンD、ビタミンB12など

  • その4:その他(同資料p12のこと)


この表では、欠乏及び過剰が健康に影響を与えるものそれぞれを分けて表にしておりますが、この分け方には少々疑問があります。基本的に金属元素は過剰であれば健康に影響を及ぼすことが知られております。ヨウ素はどちらかと謂えば、過剰摂取が心配されるミネラルです。
もう一つ、日本では肥満ばかりが問題にされますが、若い女性を中心として摂取熱量不足が心配される状況にあります。実際、若者の肥満傾向が現れる割合は減少し続けて*3
おります。熱量の不足は過剰よりも生命の危険があるのはもっと知られて欲しいと思うのです。熱量関係では日本に於いて炭水化物は欠乏の心配がほとんど無いばかりか、欠乏した場合でも脂質に比べて健康への影響は現れにくいと考えられます。単糖類、二糖類の過剰摂取を問題視しつつ、欠乏に炭水化物を示すのは一貫性に欠ける気がいたします。
微量ミネラルについても気になる点はあります。例えば、クロム、モリブデンなどは静脈栄養などの特殊な状況下以外に、欠乏症は確認されたことのないミネラルです。通常の食事では欠乏は全く気にしなくて良いモノです。これら成分が表示されるメリットはほとんど無いのでは?と個人的にはおもっております。

以上、ダラダラと述べて参りましたが、今後は必要な情報を集め少しでもお役に立てるよう準備したいと思います。