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日本の栄養成分表示制度についておもうこと   このエントリは id:ohira-y が書いています。


畝山さんに召喚された ohira-y です。共同編集者として参加させていただきます。簡単に自己紹介をさせていただくと、 食の安全情報blog*1というブログで食をテーマにいろいろ書いています。一応、食品関連の企業に勤めている会社員です。そういう立場から、栄養成分表示検討会について書くことになります。とりあえず、最初なので日本の栄養成分表示制度について思うことを書いてみます。


食品の表示を表示の義務という観点からみると、次の3つに分かれると思います。*2

  1. 必ず表示するもの
  2. 任意で表示しても構わないもの
  3. 表示してはいけないもの

1の必ず表示するものは原材料や消費・賞味期限などです。栄養成分については2の任意で表示が可能なもの。つまり、「表示してもしなくてもいいけど表示するならルール(栄養表示基準)に従って表示してね。」という扱いです。
義務ではなく任意の表示と言うことになっていますが、検討会の資料2−3*3を確認すると80%近くの食品に表示があるようです。実際、スーパーやコンビニエンスストアに行って販売されているものを見ると、ほとんどの商品には栄養成分の表示があると思います。清涼飲料やスナック菓子、即席ラーメン。パンやマーガリンなどにも多くの場合は表示があると思います。つまり、現状では義務ではないけれど、ほとんど義務表示されているのと変わらないレベルで表示が行われています。


次に、栄養成分表示を行うことで「効果」が出ているのでしょうか?私はその効果については疑問を感じています。例えば、この検討会のきっかけともなったトランス脂肪酸についての表示指針案の案内文書には「最近の研究では、若年層や女性などに、摂取量が1%を超える集団があるとの報告もある。」という記述がありました。*4トランス脂肪酸の摂取量が多い集団があるというのがトランス脂肪酸対策推進の理由の一つにあげられていますが、80%の食品の栄養表示がなされていることを考えると、そういう方々は少なくとも脂肪の量については知ることができたはずです。もちろん、そういう方々の食生活が栄養表示がない外食中心の生活であった可能性もありますが、そうであっても脂肪が多そうなメニューは感覚でもある程度分かると思います。つまり、トランス脂肪酸の摂取量が多い人は、表示があってもなくても結局たくさん食べて過剰摂取になってしまったと言えないでしょうか。


現在、日本では栄養成分表示は義務表示ではないけれど、ほとんどの食品に表示があり、一部に栄養バランスの悪い人がいるけれども概ね良好な栄養状態を保っていると思います。塩分の摂取など問題も無いわけではありませんが、悪くない状態ではないかなと思います。

畝山さんも既に指摘をなさっておられますが、栄養成分表示には健康の効果につながった「実績」がありません。また、欧米人とは食生活も違います。検討会においてはトランス脂肪酸にとらわれないことはもちろんのこと、表示の義務化にも固執しない自由な議論を期待したいです。*5


食の安全情報blog ohira-y

*1:http://d.hatena.ne.jp/ohira-y/

*2:生鮮食品と加工食品でも制度が異なるし、外食とか対面販売とかでもルールが異なるが、ここではスーパーなどで販売される包装された加工食品について述べます。

*3:http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin469.pdf

*4:http://www.caa.go.jp/foods/pdf/syokuhin415.pdf

*5:個人的には食事バランスガイドの活用に再びライトをあててみるなんてどうかと思っています。